14時より、総合体育館で、第72回卒業式を行いました。当初は、1月21日に実施する予定でしたが、新型コロナ感染拡大防止のため、延期いたしました。 今回、コロナ禍での実施に当たり、国歌、校歌、学園歌、「仰げば尊し」は、歌唱せず、演奏の静聴とするなど、発声を伴う内容は、可能な限り見合わせました。ただ、生徒さんが主役の内容(表彰、送辞、答辞、記念品贈呈など)は、例年通り実施いたしました。
まず、卒業証書と表彰状(皆勤賞、履正社高校賞、履正高鳴賞、外部表彰)をそれぞれの代表の生徒さんにお渡ししました。
続く、私の式辞、理事長の挨拶、ご来賓のご祝辞は、読み上げず、「履正だより」での掲載に代えさせていただきました。長くなりますが、以下に私の式辞を掲載させていただきます。
弥生に入り、桃の花もほころぶ、穏やかな季節となりました。この良き日に、学校法人履正社 履正社高等学校第72回卒業式を挙行いたしましたところ、校友会会長様、履正会会長様、保護者会会長様をはじめ、ご来賓の皆様におかれましては、ご多用中にもかかわりませず、ご臨席を賜り、高いところからではございますが、厚くお礼申し上げます。誠にありがとうございます。
保護者の皆様、お子さまの晴れのご卒業、おめでとうございます。高校時代は、長い人生のうちでも、 心も体も大きく成長すると同時に、多感で不安定な時期とも言われています。しかし、保護者の皆様が 熱心に育み、導いてこられた甲斐が実り、お子さまは、とても頼もしい若人に成長いたしました。皆様方の本日のお喜びは、ひとしおのものがあろうかと拝察し、心からお祝い申し上げます。
406名の卒業生の皆さん、改めて卒業おめでとうございます。今日、この日を迎え、卒業生の皆さんは今、どのような思いが胸に去来していますか。おそらく、在学中の印象深い場面が、一人ひとりの脳裏に甦ってくることでしょう。それらすべてが「経験」という名の財産であり、かけがえのない貴重なものとして、皆さんのこれからを確かに支えてくれるはずです。この3年間、コロナ禍にあって、様々な活動に、制限がかけられました。私は、皆さんと一緒に、3年前に、この履正社高校に来ました。思えば、皆さんを歓迎する入学式も行うことができませんでした。そんな状況でも、現実をしっかりと受け止め、力強く歩もうとする皆さんの姿が、随所に見られました。安易に妥協することを良しとせず、懸命に自らの可能性に挑戦する姿は、輝いていました。皆さんが手にした卒業証書には、一人ひとりのたゆまぬ努力があったことは、もちろんのことですが、深い愛情をもって見守ってくださったご家族をはじめ、時には厳しく、時には熱く、そして優しく接してくださった先生方、そしてともに喜び、ともに涙した仲間、その他多くの人たちの励ましや支えがあったことを思い起こしてください。
皆さんが進むこれからの社会は、変化の著しいものとなるでしょう。「十年一昔」では到底済まない、一年一年そのものが変わり続け、激しい変革に戸惑うことも多いと思われます。そんな時、本校で培った力を存分に発揮し、焦らず、慌てず、挫けずに、地に足の着いた実践を心掛けてください。本校で確実に学びを重ね、成長を遂げた経験者である皆さんは、新しい変動社会が求める人材であり、これからの社会を生き抜く実践者となってくれることと信じています。時代を担うリーダーとなる、皆さんの活躍に大きな期待をしつつ、餞の言葉を贈ります。
何より、出会うということ、そして出会った相手に対する気持ちを大切にしてください。人と人が出会うということは、今日の卒業式のように、いつかは別れるということを伴いますが、あとになって、それはずっとあとのことかもわかりませんが、偶然再会することによって、その人の存在が以前よりもずっと大きな存在になることがあります。再会しなくても、その人が新しく出会った人との共通の友人や知り合いであることがわかって、新しく出会った人との距離がたいへん近くなるということもあります。また、再会することがなくても、何かのときに、その人と交わした会話やその人の行動や生き方を思い出して、それが自分にとっての大きなヒントや助けになることもあります。
人との出会いが将来、自分にとって大きなものになるかどうかは、出会った人に対して、やさしい気持ちを尽くすることから始まるのではないかと思います。自分の言葉、自分の行動を「優しさ」という観点で振り返る習慣をつけたら、次は、きっと優しい言葉が口からでてきて、取るべき行動も優しくなります。そしてそれは、必ず豊かな人間関係につながります。
皆さんの友人や仲間たちとの日々のコミュニケーションにおいては、直接対面の会話や議論よりもSNSなどの手段を介する割合が一段と大きくなっていたのではないかと思います。人間とは、新しい状況や環境に慣れ、適応していく生き物であり、このようなコミュニケーションの方法が次第に普通になってくるのかもしれません。しかし他方で、人と人との直接的な対面コミュニケーションが制約されることによって、自分たちは、なにか大切なものを失いつつあるのかもしれないという漠然とした不安を感じたこともあったのではないでしょうか。私たちは、実空間と時間を共有することによって、視覚と聴覚、つまりカメラとマイクだけではなく、全ての感覚と意識を用いて、無意識のうちにその場のあらゆる情報を感知し、それらを総合してコミュニケーションを行っています。このような身体的リアリティの中で、他者に対するシンパシー、つまり共感と、エンパシー、他者の思考や感情への理解と思いやりが生まれるのだと思います。
そして最後に、この言葉を皆さんに贈らせていただきます。
”I love bended roads. You never know what may be around the next bend in the roads.”
「私は、曲がり角のある道が大好きだ。次の角を曲がったら、一体どんな景色なのかはわからない。」
「でも、どんな人と出会い、どんな出来事が待っているのか、わくわくする。」
といったところでしょうか。これは、100年以上前に発表されたカナダのモンゴメリー夫人による小説「赤毛のアン」の主人公アン・シャーリーの言葉です。この大河小説の底流に一貫しているのは、人生と自然への自由で尽きない好奇心と、他者への限りない思いやり、そして底抜けに明るい楽観主義です。これから先の皆さんの人生には、多くの曲がり角が出てくると思いますが、近道や最短距離を歩く必要は、ありませんし、回り道や遠回りをすることを恐れる必要もないと思います。自分が信じた道を、堂々と歩んでください。
保護者の皆様、立派に成長されましたお子さまのご卒業、改めて心からお祝い申し上げます。お預かりしておりました大切な大切なお子さまを、本日無事、お返しすることができ、教職員一同、これに勝る喜びは、ございません。この間、本校の教育活動に多大なご支援、ご協力、ご理解を賜り、誠にありがとうございました。 卒業生の皆さん、健康に留意され、それぞれの新たな目標に向かって精進、努力され、その精進、努力が花を咲かせ、実を結ぶことを、心から願っています。私たちも、皆さんに「履正社高校出身です」 と誇りを持って言ってもらえるよう、取り組んでいきますので、履正社高校のことを、いつまでも見守っていてください。かくて卒業生の皆さんの前途が洋々たるものとなり、幸多かれと祈念して、私の餞の言葉といたします。
式終了後、卒業生は、各教室で、最後のHRを行いました。なお、今日の卒業式の様子は、Youtubeで、配信予定です。ご来場いただけなかったご家族の皆さま、ぜひご覧ください。