子どもの将来を左右する
言語技術教育
令和5年度より、履正社中・高で私は「言語技術(Language arts)」の授業を指導・監修することになりました。「言語技術」は、多くの欧米言語圏の学校で母語教育として実施されており、生徒が高い言語力を獲得し、将来豊かな人間に育つことを目指すものです。この欧米型の言語教育を下地に私が開発した、日本語による「言語技術」の目標は3つあります。それは、問題解決力と表現力、そして教養ある日本人を育成することです。
1つ目の問題解決力とは、「クリティカル・シンキング(批判的思考)」を用いて情報を分析的、論理的、多角的に検討し、様々な課題に対して妥当な解決策を見いだす能力です。そのような思考を生徒に身につけさせるために、たとえば絵や文章、丸ごと一冊の本、あるいは説明するための材料など様々な情報を与え、それについて議論をさせます。生徒は対象を「読む」スキル、そして議論するスキルを習得していきます。情報を分析的、批判的に読むこのような能力は、英語などの母語以外の言語で書かれた文章などを読む際にも、それらの言語で議論する際にも応用が利きます。

グローバル社会で生きるために。
2つ目に身につけたい表現力とは、考えたことを口頭及び記述で、相手が理解できるように提供する力です。そのために「言語技術」の授業では、「問答ゲーム」と呼ぶ対話の基本練習を下敷きに、考えを口頭で即座に言語化して表現する訓練をします。またそれと並行して、口頭で述べた考えをパラグラフと呼ばれる型に則って文章化する方法を指導します。私達の最終目標は、型に則ったわかりやすい論文を記述できる能力を生徒に持たせることです。自分の考えを文章で表現する方法を学習するうちに、生徒の作文力が向上するばかりでなく、考え方にも変化が表れます。
3つ目は、自国の文化に誇りを持つ教養ある日本人を育てることです。「国語」と連携して、現代文で書かれた日本文学のみならず、古文や漢文を議論しながら分析的に読んだり、日本や世界の歴史について深く考察したりします。これらを通じて、グローバル化が進む現代において、日本人として恥ずかしくない教養を身につけることはとても重要です。「言語技術」を実施する国々には、丸暗記式の文学教育や歴史教育は存在せず、それらは分析と議論、作文の対象です。
このように、生徒たちは「言語技術」の授業の中で多くの文章や本、あるいはデータを読みつつ、クラスメートや教員と様々な議論を自由に重ね、学習した方法を用いて多くの作文を記述します。そうするうちに生徒たちは自分の考えを明確に持つようになり、その一方で、他人の意見にしっかり耳を傾け、最も妥当な考えに向かって、議論をすることもできるようになります。こうした社会生活を送るために不可欠な言語能力を獲得させることが、まさに「言語技術」の目指すところです。

■プロフィール
三森ゆりか先生
小学校から高校までの12年間に指導される、欧米諸国の言語技術教育に精通する。その知識・知見を活かし、日本語を使った言語技術教育を体系化。母語教育の大切さを訴え、学校現場で普及することに注力している。履正社中学校の3年生のクラスでは自ら教壇に立つ