言語技術教育創始者の目―高校1年生 丸本分析「華氏451度」

言語技術教育創始者の目―高校1年生 丸本分析「華氏451度」

「人間にとって読書は何を意味するのか?」

 今、学藝の高校1年生たちは、このような問いに直面しています。

 彼らの手元に置かれたのは、「華氏451度」。レイ・ブラッドベリの名作で、書物が禁止されたディストピア社会を舞台とした、現代文明を鋭く風刺した作品です。この本は、高校1年生の彼らにとって履正社入学以来10冊目の本であり、またずっとヤングアダルト書籍(一般的に12歳から18歳程度を主人公に据えた書籍)を読んできた彼らにとって初めての一般書でもあります。

 「華氏451度」には多くの名著が引用され、それらが物語の展開の中で登場人物たちによって語られるため、読み切るには忍耐を要します。これまで読んだことのない小説の形態でもあったため、授業開始時、生徒からはその内容の複雑さが指摘されました。それでも、登場人物達を検討し、それらの相互関係を考察し、さらには物語の構造を組み立てて考えるうちに、生徒たちから活発に意見が出るようになり、最終的には物語の全体が立ち上がってきました。

(画像はこの物語の構造図です。重要な要素や行動などを図に落とし込む事で、作者が隠した伏線や思惑を読み解きます。  慣れてきた生徒はただ板書を写すのではなく、自分が重要だと思う情報を付け加え、自分のオリジナルを作成します)

 読むとは何を意味するのか、この問いを探究してもらうために、生徒たちには、「アウシュヴィッツの図書係」(アントニオ・G・イトゥルベ、集英社)と「読書の歴史 あるいは読者の歴史(A History of Reading」(アルベルト・マングェル、柏書房)に書かれた内容も一部紹介しました。前者は、絶滅収容所だったアウシュヴィッツに実際に存在した、たった8冊の本を命がけで守った人々の実話をもとに書かれた小説であり、後者は読書の意味を考察した大作で、ここにも書物がたびたび禁じられ、焚書対象となった事実が指摘されています。

 自分たちにとって、人間にとって本とは何か?

 その最終的な考察は、生徒たち自身にゆだねられています。彼らは、この後グループで議論し、自分たちで出した答えを元にポスターを作成し、発表することになっています。はたして彼らがどのような結論に至るのか、彼らを指導して4年目になる私自身が今から楽しみでなりません。

 私達人間こそが、私達の未来を作り出すことのできる唯一の職人なのです。現代において、一冊の本へ穏やかな敬意を払うことで、もしかしたら私達は立ち止まって内省し、誤った選択肢やばかばかしい楽園の約束を超えることができるかもしれません。そして、実際にどんな危険が私達を脅かし、私達が持っている武器が一体何なのかを自らに問いただすことができるかもしれません。恐らくその問こそが、読書という技法の正当性なのかもしれないのです。(「読書の歴史」アルベルト・マングェル、7頁)

*参考:「華氏451度」はアメリカの多くの州で、中学3年生程度の必読書となっている本です。この必読書とは、学校で扱う、という意味です。

つくば言語技術教育研究所

三森ゆりか

(人物の相関関係も物語を読み解く上で欠かせない要素です。全体で話し合いながら板書で情報を整理し、さらに自分なりの解釈を付け加えていきます)

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