【道徳】優しさってなんだと思う?

【道徳】優しさってなんだと思う?

 本日,中学2年生ABC組では,有川浩(有川ひろ)作『阪急電車』の中のお話である「宝塚方面駅 - 西宮北口駅」という文章を題材に道徳の授業を実施して,「優しさ」や「公共の場での行動」について考えました。

〈あらすじ〉
 混雑している電車の中で,後から乗車して来る友達マユミのために座席に鞄を置いて席を確保していることをおじいさんに大声で怒鳴られた女子高生のミサは,自分と合流したマユミが他の乗客からも白い目で見られていることに気付き,逃げるように電車を降りる。マユミはおじいさんへの不満を口にするが,2人とも自分たちの行為が,周りの人たちにとって迷惑だったことに気付いていた――。

優しさってなんだと思う?

まずお話を読む前に,生徒たちに,「優しさって何だと思う?」と問いかけました。生徒たちの回答は,以下のようなものでしたが,「優しくする側の視点」が多かった中で,「優しくしてもらう側の視点」があったのが印象的でした。

〈 優しくする側の視点 〉
・人への思いやり
・その人や物事に合った行動
・誰かを親切心で助けたり手伝ってあげたりすること
・相手に何かを正しく教えること
・相手の気持ちに寄り添うこと
・相手を気遣うこと
・人のことを思いやれること
・人に平等に接すること
・誰かに感謝してもらえるような行動をすること
・誰かのことを思いやること
・丁寧に接すること
・見返りを求めないこと
・その行いで相手がどうなるか考えること
・相手を優先すること
・相手を少しでも嬉しくすること
・人を悲しませないこと
・さりげなく気に掛けること
・口調が強くならず,周りに気遣いができること
・周りのことをよく見て,自分中心じゃない振る舞いができること
・相手を想って叱る優しさや,相手を想って気遣う優しさ
・どれだけ自分以外の人たちのために行動できるか
・人や物に対して真っすぐ向き合うこと
・努力を認めること
・嫌われてもいいから,相手のために行動すること
・あらゆる部分を尊重すること
・自分のものではなくても,目の前のごみを捨てること
・白状を持っておられる方の手助けをすること
・その人の状況や状態によって,掛ける言葉を変えて,寄り添うこと
・善意の押し付けにならないようにすること
・例えその相手が親友だろうと,してはいけないことはしてはいけないと伝えること

〈 優しくしてもらう側の視点 〉
・誰かに助けてもらうこと
・心配してくれること
・悪いことでも,些細なことを注意してくれること
・得意なことや個性を引き出してくれること
・誰とでも良く接してくれること
・基本的なことも最初から教えてくれること
・自分がされて嬉しくなるようなこと
・周りの意見に流されずに何かをしてくれること
・さりげなく声を掛けてくれること
・相談に乗ってくれること
・自分の悪いところやミスしているところを言ってくれたり注意してくれること
・親切心で教えてくれること
・自分ができないことを手伝ってくれること

〈その他の視点〉
・時にはそれが苦しくなるようなこともあるもの
・誰でも心がけることができるもの
・知らないうちにしていること
・表の部分だけでなく,裏でも行動できること

注意する側は何を考えていた?

次に,生徒たちは「マナー違反の女子高生を注意する前に,老人が心の中で考えていたこと」について,以下のようなことを考えました。これも,老人の言動だけを見て分かることもあれば,そこに現れていない葛藤や迷いについて目を向けられている生徒がいました。

〈老人視点 かつ 注意するという行動に直結する考え〉
・迷惑だな。
・注意されないと気付かないのか?
・自分も座りたいのに。
・早く鞄をどけてほしい。
・いつ注意しようかな?
・年寄りなんだから,優先して座らせてくれ。

〈 老人視点 かつ 注意することへの葛藤や迷い 〉
・大きな声で怒鳴ったら周りの迷惑にならないかな。
・怒鳴るべきか,怒鳴らないべきか。
・いつ注意しようかな。
・この場で注意するべきだろうか

〈 周囲の乗客視点に立った考え 〉
・周囲の人が迷惑しているから誰かが注意しないといけない。
・みんなが座りたいのに座席に鞄を置くなよ。
・電車の座席はみんなが使う物なのに。

〈 学生視点に立った考え 〉
・学生のうちに正しいことを教えてあげよう。
・大人に言われる前に気付いてほしいな。
・周りに迷惑をかけていることに気付いていないのではないか。
・あの子たちの今後のためにも注意しないといけない。
・この子は周りを見ることができないのかな?
・非常識な子供だな。

この話に現れている「優しさ」とは?

さらに,生徒たちは「この話の中に現れているのは,誰の,どのような『優しさ』か」について,以下のようなことを考えました。先ほどの問いでは,学生を注意した老人の「優しさ」に注目できている生徒はかなり少なかったですが,この問いではガラリと雰囲気が変わりました。

〈 おじいさんの「優しさ」 〉
・周りの人のために,代表して女の子を叱る優しさ
・周りの人たちが言えないことを言う優しさ
・無自覚な2人に悪いところを教える優しさ
・他の人が困っているかもしれないことを伝えるために叱った優しさ
・2人が社会に出たときに必要な力を教えてあげる優しさ
・学生たちの将来を考えて,言いにくいことを伝える優しさ
・周りの人たちからミサに向けられている白い目に気付き,それをミサたちにも気付かせようとする優しさ。
・周りの人たちが快適に過ごせるようにする優しさ
・この日注意するまで,叱るのを我慢し続けた優しさ

〈 ミサの「優しさ」 〉
・掃除当番で疲れた友達を気遣う優しさ
・疲れた友達のために席を確保する優しさ

〈 マユミの「優しさ」 〉
・乗車後すぐに,ミサがおじいさんに何をされたか心配する優しさ

最後に,授業の終わりには,本日の題材にマッチした楽曲を聴き,特に共感した歌詞についても考えました。

https://www.youtube.com/watch?v=YR7gMP93CKI

BUMP OF CHICKENさんの「ひとりごと」(2007年発売のアルバム「Orbital Period」に収録)の歌詞のうち,生徒たちが共感したフレーズとその理由を紹介します。

「ねぇ 優しさってなんだと思う 僕少し解ってきたよ きっとさ 君に渡そうとしたら 粉々になるよ」

・人によって優しさの感じ方も違うと思うから。
・粉々になるほど必死に考えてくれるのが,自分だったら嬉しいから。

「ねぇ 君のために生きたって 僕のためになっちゃうんだ 本当さ 僕が笑いたくて 君を笑わせているだけなんだ ごめんね」

・他人のために生きることが,自分のためにもなるなら,Win-Winの関係だと思ったから。
・相手のためにしようとしても,結局それは自分のためにもなっていると思うから。
・君のために生きて良いことをしたら,それが自分に返ってくるという意味だと思ったから。
・「何か良いことをした」を糧にして生きているところもあるが,優しいことをしたのならば,それはもう「優しさ」だと思うから。
・優しさの本質を表しているし,この物語に合っていると思ったから。
・この歌詞から優しさや嬉しさを自分も感じて,自然な感じで笑わせている感じが伝わってきたから。
・他人の幸せを願っても,いずれ自分の幸せにもつながるという好循環があることに気付けたし,世界がそうやって回ってほしいと思ったから。

「人に良く思われたいだけ 僕は僕を押し付けるだけ 優しくなんかない そうなりたい なりかたが解らない」

・「みんなに優しく」という理想の限界を認めつつ,自分にできる部分はどこまでだろうと考えさせられたから。
・人に良く思われたいからこそ,言えないことやできないことがたくさんあると思うから。
・人を楽しませたり,その人の願いを叶えてあげたりするには,多少メンタルがきつくても笑顔でいようとする自分と重なったから。

「あぁ うん 言われなくたって気付いてる 僕ちょっと考え過ぎ ありがとう 笑ってくれたおかげで 僕も笑える」

・既にそれを考えている時点で少しは優しいし,頭の中がまとまらない感じなのも,まさにタイトルの「ひとりごと」だと感じたから。

「ねぇ 優しさってなんだと思う さっきより解ってきたよ きっとさ 君の知らないうちに 君から貰ったよ 覚えはないでしょう」

・優しさは知らないうちに渡したり貰ったりしているものだと思ったから。
・あなたが無意識に私に優しさを教えてくれたという思いが込められているから。
・無自覚で優しくできることはすごいと思うから。
・優しさとは意識してできるものではなく,自然にそうなっているものだと思ったから。
・私が悲しんでいる時に寄り添ってくれたり,さりげなく私のことを分かってくれるような行動をしてくれたりした時,私はとても嬉しかったから。
・相手は気付いていないけど,たくさんの優しさを貰ったということが何度もあると思うから。

「皆良く思われたいだけ 自分自身を売り込むだけ 優しくなんかない そうなりたい 僕が一番ひどい」

・自分も見返りを求めたり,自分をよく見せたりすることがよくあるから。
・よく考えてみると,良く思われたくて,優しくしていたかもしれない時があったように思えたから。
・おじいさんがミサを注意した理由の一つに,こういうことがあったのかもしれないと思うから。
・優しさは,他人のためにしていることか,自分のやめにしていることかは,人によって違うし様々だから。
・人に褒められるために人に優しくするのではなく,人に優しくしてその人のためになるようにするつもりで接するべきだと思うから。
・八方美人はいつか自分もしんどくなるし,それをよく思わない人もいると思うし,みんなに好かれるのは難しいと実感できるから。

「望みは望まない事 僕が知らないうちに 君のためになれる事」

・優しさというのは,自分がよく思ってもらうためのものではなく,誰かのために優しくするということだから。
・望みは望んでいなくてもいつか自然に叶うし,本当の優しさとは自分が気付かずに行動しているものだと思ったから。
・無意識のうちに人のためになる行動をとることは難しいことだから。
・君のためと思って生きていたら僕のためになっているのだから,意識していなくても君のためになれるようになりたいから。

「ねぇ 優しさって知ってるんだ 渡せないのに貰えたんだ」

・自分は優しくできていないかもしれないけど,他人からは優しくしてもらえたことに気付くことがあると思うから。
・優しさは人に渡すことができないのに,貰えた人は心が温まってホッとするという部分が良いと思ったから。
・優しさは自分では渡せているかわからないが,相手からは優しさを貰えているんだと思ったし,私も優しさをたくさん渡していきたいと思えたから。
・優しさとは,人との関わりの中で学ぶものだから。
・まだ本当の優しさに気付いていないけれど,渡せていることより貰えていることを先に自覚できている。それだけで十分なのだと感じたから。
・周りの人がいつも優しくしてくれることに対して感謝すべきだと思えたから。

「君に良く思われたいだけ 僕は僕を押し付けるだけ 優しくなんかない なれやしない なりたいと思わない」

・自分を押し付けてまで,相手に良く思われたいという気持ちに共感したから。
・優しさの本質を体現しているように思えたから。

「一人では無理な事だから 誰かとの間に在るから」

・自分だけで優しさはつくることはできないから,誰かと一緒につくっていこうと感じたから。
・一人では無理な事も友達と協力をして互いのことを思いやる気持ちや優しさを持つのが大切だと思ったから。
・優しさは自分一人だけじゃなくて,誰かがいてこそ優しくなれると思えたから。
・優しさは一人では無理で,人がいてこそできることだと感じたから。
・優しさは一人で作るものではなく,互いの間に在るものということを表しているから。

「ねぇ 優しさってなんだと思う もう考えなくたっていいや 本当さ 僕ら知らないうちに 僕らで作ったよ 二人で出会ったよ」

・自然に優しさが生まれているようだから。
・意識して優しい自分でいられるようにするのではなく,一緒に成長していくにつれて相手のことを思いやる心も成長するという意味に感じたから。

1番・2番「ねぇ 優しさってなんだと思う」 ~ 3番「ねぇ 優しさって知ってるんだ」

・最初のパートでは優しさを知らない風なのに,最後のパートでは優しさを知ったという,歌詞の中の変化が,おじいさんの注意する前と注意した後の心の中と重なるようで良いと思ったから。

 「優しさ」というものについて,最初の問いの時点から最後の歌詞に至る過程の中で,生徒たちの思考が徐々に深まっていくのを感じていただけましたでしょうか。

 この歌は,「ひとりごと」というタイトルにあるように,「読み手」である主人公が「優しさ」について語っていく中で,優しさの中のエゴイズムに気付きながらも「優しくなんかない そうなりたい」し,「望みは望まない事」・「僕が知らないうちに 君のためになれる事」という無意識的な「優しさ」を求めていく様子だったのが,最後には「優しさ」とは「渡せないのに貰えた」ものであり,「人と人との 心の外の中に在る」ものであり,「誰かとの間に在る」ものだと思えて,それを「知らないうちに 僕らで作った」もので「二人で出会った」ものだと納得できるようになったという歌の中での思考の深まりが,まるで本時の生徒たちと重なって見えました。

本日の教材:『新しい道徳2』(東京書籍)より「宝塚方面行き――西宮北口駅」(文・有川ひろ、絵・吉崎観音)

中学第2学年 学年主任 河本健斗

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