【理事長だより】「vol.90 勝敗を超えて」
第108回全国高等学校野球選手権大会の大阪府代表として、履正社高校硬式野球部が甲子園への切符をつかみました。
厳しい大阪大会を勝ち抜いた選手、指導者の努力に、心から敬意を表します。そして、日頃から選手たちを支えてくださった保護者の皆様、卒業生、地域の皆様、履正社野球を応援してくださるすべての皆様に、心より感謝申しあげます。この喜びは、選手だけのものではありません。選手を信じ、励まし、支え続けてくださった多くの方々と分かち合う喜びでもあります。
甲子園は、日本中の期待を背負って球児たちが集う舞台です。もちろん勝敗はあります。しかし、その価値は勝敗を超えたところにもあります。ひたむきに戦う選手たちの姿は、多くの人に勇気や希望を届けます。それこそが、甲子園という舞台が持つ、勝敗を超えた価値ではないでしょうか。
その喜びに包まれていた同じ日の夕方、熊本県で大きな地震が発生しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申しあげます。十年前の熊本地震から復興への歩みを続けてこられた地域が、再び被害を受けたことに胸が痛みます。
甲子園には、熊本県代表の高校も出場します。被災された方々の中にも、その姿を楽しみにしておられる方が少なくないでしょう。一日も早く穏やかな日常が戻り、誰もが安心して高校野球を楽しめる日が訪れることを心から願っています。
阪神・淡路大震災の年、オリックス・ブルーウェーブは「がんばろうKOBE」のワッペンを胸に戦いました。
当時、選手だった田口壮さんは、「こんな時に野球をやっていていいのだろうか」と葛藤したと語っています。しかし、震災直後のオープン戦で球場を埋め尽くしたファンの姿を見て、「野球を届けなければならない」と決意したそうです。
チームはその年にリーグ優勝を果たし、「がんばろうKOBE」は、多くの被災者を励まし、復興の象徴の一つとなりました。その精神は、球団名が変わった今も脈々と受け継がれています。履正社高校野球部OBであり、現在オリックス・バファローズを率いる岸田護監督も、「何年たっても、つらい思いをされている方が、野球に熱中できる時間を少しでも多くつくっていきたい」と語っています。
野球は、一人ではできません。投手と捕手、仲間、指導者、そして応援する人々。それぞれの力が一つになって初めて、一試合が成り立ちます。だからこそ、一球に込められた全力や最後まであきらめない姿勢は、多くの人の心を動かすのでしょう。
スポーツは、災害そのものを乗り越えることはできません。しかし、人の心を支え、「もう少し頑張ってみよう」と思わせる力があります。だからこそ、人は苦しい時ほどスポーツに励まされ、前を向く力を得てきたのではないでしょうか。
まもなく甲子園の熱戦が始まります。
出場するすべての選手たちが、一戦一戦を全力で戦い抜き、そのひたむきな姿が、被災地で不安な日々を過ごされている方々をはじめ、多くの人に勇気と希望を届ける大会となることを願っています。 勝敗はいずれ記録になります。しかし、人の心に希望を灯した一瞬は、いつまでも記憶に残ります。甲子園は、そのような記憶を積み重ねながら、一世紀を超えて歩んできました。今年もまた、人々の心に残る新たな記憶が生まれることでしょう。
【参考資料】
震災後の合言葉は「がんばろうKOBE」 オリックス田口壮さんが奮起した観客の姿(産経ニュース)
https://www.sankei.com/article/20250114-VXYROUSHWBLNBEMPLRVH7JUM2Q/
【オリックス】震災から31年…黙とうをささげた岸田護監督「今年は『がんばろうKOBE』の時を思い出して、もっと頑張ろう」(パ・リーグ.com)
https://pacificleague.com/news/2026/1/10046187